安定した血管疾患例におけるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP,NT-proBNP)と
心血管リスクとの関連
meta-analysis
幅広い状況下でBNP,NT-proBNP濃度とCVDリスクは強く相関する。
BNP,NT-proBNPの転帰予測の有用性を明らかにし,出版バイアスを避けるために,大規模な一般市民における研究でのさらなる検討が求められる。
Di Angelantonio E et al. B-type natriuretic peptides and cardiovascular risk: systematic review and meta-analysis of 40 prospective studies. Circulation. 2009; 120: 2177-87. PubMed
目的 |
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多くの前向き試験でBNP,NT-proBNPと心血管(CVD)リスク(冠動脈疾患[CAD],脳卒中)との関連を検討しているが,系統的には評価されておらず,11試験を合わせたレビューも発表されているが現在入手できるデータのおよそ6分の1しか使用していない。
そこで,より多くのデータ,特徴が明確な3集団(一般住民,CVDの危険因子の値が高いもの,安定CVD例)をメタ解析し,BNP,N末端プロBNP(NT-proBNP)とCVDとの関連を検証した。 |
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対象 |
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8万7,474人・心血管疾患1万625例。40*の長期前向き試験**の対象。
* 欧州23試験,北米5試験,オーストラリアおよびニュージーランド1試験,東アジア7試験(日本5試験),国際共同研究4試験。
前向きコホート36試験,“nested”ケース(コホート内症例)コントロール4試験。住民登録からの組込み14試験,病院患者の組込み26試験(10試験は臨床試験)。NT-proBNPとCVDとの関連を検証したのは30試験,BNPとの関連7試験,NT-proBNPおよびBNPとの関連3試験。
** BNP,NT-proBNPとCVD(心筋梗塞[MI],脳卒中,一過性脳虚血発作[TIA],心不全)の関連を2009年7月以前に文献発表した試験;一般住民(ベースライン時にCVD既往に基づいて選別していない),CVDの危険因子の値が高いもの,安定CVD(ベースライン時から30日以上前にMI,狭心症,その他の冠動脈疾患,TIAを含む脳卒中,血行再建術を含む冠動脈術)例を1年以上追跡している試験。
除外基準:試験開始時に心不全あるいはACSを対象に入れていた試験。
■解析に含まれた日本のコホート患者背景と転帰
・一般住民(1万3,466例):Takahashi et al/ Iwate-KENCO
平均年齢63歳,男性33.6%,評価ペプチド;BNP(中央値23pg/mL),追跡期間中央値2.8年→CVD 102例(脳卒中102例):Atherosclerosis. 2009; 207: 298-303. PubMed
・CVDの危険因子高値例(3,123例):Tsuchida et al
59歳,42.0%,BNP(-),5.5年→219例(CVDに心不全を含む):CAD 49例,脳卒中101例:J Cardiol. 2008; 52: 212-23. PubMed
・安定CVD例(552例):Kubozono et al
62歳,74.3%,BNP(平均値142pg/mL),1.4年→29例(CVDに心不全を含む):Circ J. 2008; 72: 575-81. PubMed |
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方法 |
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MEDLINEでreviews,meta-analysisを含む文献を検索した。
検索用語は曝露 (natriuretic peptide, B-type natriuretic peptide, brian natriuretic peptide, N-terminal pro B-type natriuretic peptide, BNP, NT proBNP) ,転帰 (cardiovascular, CHD, myocardial infarction, MI, cerebrovascular, stroke, transient ischemic attackなど) 。 |
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結果 |
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・一般住民を登録した11試験(2万7,785例):CVDの既往あり6試験(5-20%)。平均追跡期間2.0~12.8年でCVD 1271例。
・CVD危険因子高値例11試験(1万3,387例):1~15.5年で2,040例。
・安定CVD例18試験(4万6,302例):1.4~6.7年で7,314例。
・NT-proBNP値:30-750pg/mL,BNP値:9-142pg/mLで,一般住民に比べ安定CVD例で高い傾向がみられた。
・加重平均追跡期間およそ5年でCVDは1万625例発症。
NT-proBNP,BNPいずれかの3分位の最高値と最低値で比較すると,危険因子(年齢,性,喫煙,糖尿病既往,血圧,高血圧既往など)で調整後CVDのリスク比(RR:random-effect解析)は2.82;95%信頼区間2.40-3.33,fixed-effect解析によるRRは2.24;2.12-2.37。
CADが発症したのは19試験(5万6,355例)で4,301例(RR 2.03;1.54-2.66);fixed-effect解析によるRR 2.25;2.07-2.44,脳卒中発症は13試験(5万6,764例)で2,063例(1.93;1.58-2.37);1.64;1.47-1.84。
・日本のコホート:Takahashi et al(RR 3.14;1.58-6.24 ),Tsuchida et al(7.00;4.29-11.4),Kubozono et al(2.49;1.57-3.95)。
・試験間には異質性が認められたが(CVD:I2=83%;77-87[P<0.0001]),対象背景,評価したペプチド(NT-proBNP,BNP),CVDに心不全を含んだか否かによるものではなかった。
CADの異質性:I2=:88%;83-92[P<0.001],脳卒中:55%;15-76[P<0.001]。
・CVDが250例以上発症した6試験のRRは1.94;1.57-2.39。
・RR(NT-proBNP,BNP3分位の最高値 vs 最低値)はBNP:2.89;1.91-4.38,NT-proBNP:2.82;2.35-3.38,ベースライン時の危険因子(一般市民:2.68;2.07-3.47,危険因子高値:3.35;2.38-4.72,安定CVD:2.60;1.99-3.38)。
標準的なCVDの危険因子に加え,BNP,NT-proBNPの評価を行うとリスクの層別がわずかに改善する。 |
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