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脳梗塞急性期における遺伝子組み換え型組織プラスミノゲンアクチベータ(rt-PA)治療の
有効性が期待できる治療開始時間
pooled analysis

臨床症状およびCTで確認された脳梗塞患者において,発症から4.5時間以内のrt-PA静注は有効で,治療開始が早いほうがベネフィットは大きい。4.5時間を超えるとリスクがベネフィットを上回る可能性がある。
Lees KR, et al for the ECASS, ATLANTIS, NINDS, and EPITHET rt-PA study group investigators. Time to treatment with intravenous alteplase and outcome in stroke: an updated pooled analysis of ECASS, ATLANTIS, NINDS, and EPITHET trials. Lancet. 2010; 375: 1695-703. PubMed

コメント

心筋梗塞に対する血栓溶解療法については,当初6時間以内の施行例に有効とされ,24時間以内でも有用性があると理解されている。また,脳出血リスクの高い脳梗塞症例でも発症後3時間以内は有用性があると理解されている。これを4.5時間まで延長できるか,をメタ解析により調査すると,t-PA投与が症状出現後速やかであればあるほど,3ヵ月後のquality of lifeの障害は少ないとされた。
t-PAの適応を考えるには,「ともかく速く適応症例を選択すること」が大切である(後藤)。

目的 急性脳梗塞発症から3時間以内のrt‐PA(alteplase)静注治療の有効性がプラセボ比較試験から示されていたが,2004年に発表されたpooled-analysis(個々の患者のデータを統合した解析)によると,発症からalteplase治療開始までの時間が遅れると有効性が低減することが示唆されている(Lancet. 2004; 363: 768-74.)。
脳梗塞発症から alteplase静注開始までの時間(OTT)によるリスク-ベネフィットを評価する。
対象 3,670例(alteplase群1,850例,プラセボ群1,820例)。
急性脳梗塞患者におけるalteplaseの有効性を検討した主要プラセボ対照ランダム化比較試験参加症例で,OTT≦360分:NINDS(National Institute of Neurological Disorders and Stroke) part 1・2試験,ECASS(European Cooperative Acute Stroke Study) 3試験,ATLANTIS(Alteplase Thrombolysis for Acute Noninterventional Therapy in Ischemic Stroke) 2試験,EPITHET(Echoplanar Imaging Thrombolytic Evaluation Trial)。
EPITHETを除き,患者登録は発症時間を明らかにする臨床診断および頭部CT評価(頭蓋内出血は除く)に基づいた。
■患者背景:平均年齢66歳(中央値68歳),男性60%,NIHSS (National Institutes of Health Stroke Scale)スコア 11(OTT:0~90分;15,91~180分;13,181~270分;10,271~360分;10),血圧153/84mmHg,体重77kg,糖尿病18%,既往:脳卒中15%;心房細動19%;高血圧57%,aspirin投与歴26%。
OTT 233分(中央値240分)。
方法 脳梗塞発症から治療開始時間と3ヵ月後の良好な転帰(modified Rankinスコア0~1)との関連は,多変量*ロジスティック回帰分析で評価。
* 治療,OTT,年齢,入院時のNIHSSスコア,拡張期血圧(<70,71-90,>90mmHg),高血圧既往,年齢と入院時のNIHSSスコアとの交互作用,OTTと治療との相互作用。
結果

・alteplase群のプラセボ群と比べた3ヵ月後の良好な転帰のオッズ比(OR)はOTTが短いほど上昇し(P=0.0269),270分を超えると有効性はみられなくなった。
OTT別の3ヵ月後の良好な転帰のOR:0-90分;2.55(95%信頼区間1.44-4.52),91-180分;1.64(1.12-2.40),180-270分;1.34(1.06-1.68),271-360分;1.22(0.92-1.61)。
3ヵ月後の複合エンドポイント(modified Rankinスコア+Barthel Indexスコア+NIHSSスコア)のOR:0-90分;2.84(1.75-4.60),91-180分;1.52(1.10-2.11),181-270分;1.32(1.09-1.61),271-360分;1.22(0.96-1.54)。

・調整後の死亡のORはOTTが長いほど上昇した(P=0.0444)。
0-90分;0.78(0.41-1.48),91-180分;1.13(0.70-1.82),181~270分;1.22(0.87-1.71),271-360分;1.49(1.00-2.21)。

・脳実質内大出血は,alteplase群96例(5.2%) vs プラセボ群18例(1.0%)(OR 5.37;3.22-8.95)で,OTTとの明らかな関連は認められなかった。
全脳内出血は602例(32.5%) vs 441例(24.2%)(OR 1.60;1.37-1.87)。


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