C反応性蛋白(CRP),フィブリノーゲンと心血管疾患の予測:Emerging Risk Factors Collaboration(ERFC)
pooled analysis
古典的リスク因子を用いた心血管リスク評価モデルにC反応性蛋白(CRP)またはフィブリノーゲンを追加すると高リスク例の識別能が改善,推定では10年間で400~500人あたり1件の心血管イベントを予防できる。
Kaptoge S, et al.; Emerging Risk Factors Collaboration. C-reactive protein, fibrinogen, and cardiovascular disease prediction. N Engl J Med. 2012; 367: 1310-20. PubMed
目的 |
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初発心血管イベントの予測におけるCRPその他の炎症マーカーの意義については,議論が続いている。主要ガイドラインではさまざまな見解が示されており,NHLBI(米国心臓・肺・血液研究所)による心血管予防ガイドラインの一環であるコレステロールに関する改訂ガイドライン(Adult Treatment Panel:ATP IV)のような,炎症マーカーに関する新規ガイドラインの策定が待たれる。
本研究では,古典的リスク因子による心血管リスク評価モデルにCRP,フィブリノーゲンなどの炎症マーカーを加えることで初発心血管イベントの予測能が改善するかを定量的に評価するため,52の前向きコホート研究の個別患者データを解析した。
一次エンドポイントは,初発の心血管イベント(心筋梗塞,致死的冠動脈疾患[CAD],脳卒中)。 |
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対象 |
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24万6,669人・52研究。下記をすべて満たす前向きコホート研究:心血管疾患の既往がない患者を対象としている,明確な定義に従って判定された原因別死亡/血管イベントが記録されている,追跡期間>1年,CRP/フィブリノーゲンのベースラインデータがあり,古典的リスク因子(年齢,性別,喫煙状況,糖尿病既往,収縮期血圧,総コレステロールおよびHDL-C)に関する情報が揃っているもの。
■患者背景:年齢61歳,男性56%,西欧57%,北米34%。 |
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方法 |
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古典的リスク因子を含むモデルにCRPまたはフィブリノーゲンを追加した場合のリスク予測能の改善を,C統計量,D-measureの変化により評価。 |
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結果 |
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[リスク予測能の改善]
CRPのデータが得られた16万6,596人(38コホート)のうち,心血管イベント初発は13,568件(CAD 8,816件,脳卒中4,752件)(160万人・年追跡)。
フィブリノーゲンのデータが得られた18万5,892人(40コホート)のうち,心血管イベント発生は12,021件(7,475件,4,546件),(170万人・年追跡)。
CRP+フィブリノーゲンのデータが得られたのは95,733例。
古典的リスク因子+HDL-C値で,心血管疾患予測モデルのC統計量は0.0050上昇。さらにCRPまたはフィブリノーゲンを追加すると,C統計量はそれぞれ0.0039,0.0027上昇した(P<0.001)。その結果,10年リスク「低(<10%)」,「中(10~<20%)」,「高(≧20%)」の3分類についてのnet reclassification improvement(NRI)は,それぞれ1.52%,0.83%改善(P<0.02),integrated discrimination index(IDI)は各0.0036,0.0027。
CRP+フィブリノーゲンを追加した場合のC統計量の変化も,同様であった。
[炎症マーカーを加えたモデルによる心血管リスクの推定]
・古典的リスク因子のみ
40歳以上の10万人のうち,15,025人が10年心血管リスク「中リスク」に分類され,13,199人がATP IIIガイドラインに準じたスタチン治療の対象(推定リスク≧20%,推定リスクにかかわらず糖尿病などのリスク因子を保有する患者)から外れると推算される。
・古典的リスク因子+CRPまたはフィブリノーゲン
CRPの追加で新たに690人が「高リスク」に再分類され,うち151人が10年以内にイベントを発症,フィブリノーゲンの追加では625人が「高リスク」に再分類され,134人がイベントを発症すると予測される。これらの高リスク再分類例にガイドラインに準じたスタチン治療を行えば,CRP測定により10年間で新たに約30件,フィブリノーゲン値測定により約27件の心血管イベントを抑制できることになる。
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