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糖尿病患者,非糖尿病患者における腎疾患指標と死亡,末期腎不全との関係
meta-analysis

糖尿病患者は非糖尿病者にくらべ死亡と末期腎不全のリスクが高かったものの,それらのリスクのeGFR,ACRの変化に伴う相対的変化は糖尿病の影響を受けなかった。
Fox CS, et al.; Chronic Kidney Disease Prognosis Consortium. Associations of kidney disease measures with mortality and end-stage renal disease in individuals with and without diabetes: a meta-analysis. Lancet. 2012; 380: 1662-73. PubMed

コメント

eGFRの低下や尿アルブミン量(ACR)上昇に代表されるCKDは死亡や末期腎疾患(ESRD)の発生と密接に関連し,糖尿病と高血圧症の主要合併症である。CKDの25%が糖尿病性腎症であり,糖尿病患者の増加と共に糖尿病性腎症患者が増大し,最近10年で1.5倍増加している。本論文では腎疾患研究の立場から,eGFR/ACRと死亡/ESRDの発生率の関連を糖尿病の有無で100万人以上40ヵ国の症例のメタ解析を用いて対比した研究である。eGFRもACRも参照ポイントを設定し腎機能の各ステージを対比しているが,糖尿病患者ではeGFRやACRがどの段階であっても非糖尿病患者に比べて全死亡/心血管死の発生率が有意に高いという結果は想定の範囲内である。本研究の重要ポイントは,(1) 腎機能の各ステージにおける相対的リスクは糖尿病の有無により変わらない(交互作用がない)こと,(2) eGFRの低下による死亡率の上昇は高血圧症の有無により異なり,高血圧症も糖尿病も無い症例ではよりeGFRの低下と予後との関連が強いこと,である。
非糖尿病性腎症の原因は,糸球体性・血管性・尿細管間質性・のう胞性疾患が主体であるが,非糖尿病者でのeGFR/アルブミン尿と予後との関連は今まであまり報告されていない。糖尿病性腎症も高血圧性腎症も予後は不良であるが,腎機能の低下したステージでの腎機能と予後との関連は糖尿病や高血圧のない例のほうがより密接である。糖尿病患者でESRDへの予後に対してはeGFRだけではなくACRを組み合わせたほうが良いことはPimaインディアンでの有名な報告がある。今回の結果ではeGFRとACRの計測意義について末期腎疾患では少し異なることが示されたが,両者は腎機能の違う側面をみており,各々の位置づけがより明確になる研究が今後期待される。
本研究では,糖尿病性腎症は非糖尿病性腎症より予後は不良であるが,eGFRとACRが予後に及ぼす意義は非糖尿病者においても糖尿病患者と同等であり,経時的にeGFR/ACRを測定する意義を強調している。糖尿病性腎症ではeGFR/ACRの実測値より腎機能それ自体はより低下している可能性を再認識すべきであるが,非糖尿病性非高血圧性腎症におけるeGFRの経時的低下は臨床的転帰からみるとより注意が必要である。(星田


目的 慢性腎臓病(CKD)は推算糸球体濾過量(eGFR)の低下とアルブミン尿の増加を特徴とする転帰不良の疾患だが,これらのリスクが糖尿病の影響を受けるかどうかは明らかでない。eGFR,アルブミン尿と死亡および腎転帰の関係が糖尿病患者と非糖尿病者で同等かを検証するためメタ解析を実施した。
一次エンドポイントは,全死亡,心血管死(心筋梗塞,心不全,心臓突然死,または脳卒中による死亡),末期腎不全(ESRD)。
対象 102万4,977人(うち糖尿病12万8,505例[13%])。一般住民コホート23*,心血管疾患高リスクコホート7**,CKD患者コホート13***:対象が1,000人以上で(CKD患者を主対象とする研究は1,000人未満も可),eGFRとアルブミン尿に関する情報があり,イベント発生数≧50件の研究。対象者は18歳以上。
* ARIC,CHS,Framingham,HUNT,IPHS,MESA,NHANES III,REGARDSなど。
** ADVANCE,KEEP,KP Hawaii,MRFIT,Pimaなど。
*** BC CKD,Geisinger,GLOMMS-1,RENAALなど。
方法 Chronic Kidney Disease Prognosis Consortium基準に従って対象を選択。2011年3月~2012年6月に解析を実施。
一般住民,高リスクコホートではeGFR 95mL/分/1.73m²,アルブミン-クレアチニン比(ACR)5mg/gのときを参照ポイント(ハザード比[HR]=1)として,またCKDコホートではeGFR 50mL/分/1.73m²,ACR 20mg/gのときを参照ポイントとして,eGFR,ACRの変化に伴う各イベントのHRを算出。
結果 [一般住民+高リスクコホート]
全死亡は平均8.5年の追跡で75,306例,心血管死はデータが得られた23コホートにおいて平均9.2年の追跡で21,237例。
非糖尿病者のeGFR 95mL/分/1.73m²またはACR 5mg/gのときのHRを1とすると,eGFR,ACRの全範囲において,糖尿病患者の全死亡および心血管死リスクは非糖尿病者よりも1.2-1.9倍高かった。
糖尿病患者,非糖尿病者のそれぞれでeGFR 95mL/分/1.73m²またはACR 5mg/gのときを参照ポイントとすると,eGFRまたはACRの変化に伴う死亡HRは糖尿病患者と非糖尿病者で同様に推移した(たとえば,eGFR 45 mL/分/1.73m²のときの参照ポイントと比較したHR:糖尿病患者1.35;95%信頼区間1.18-1.55 vs 非糖尿病者1.33;1.19-1.48,ACR 30mg/gのとき:1.50;1.35-1.65 vs 1.52;1.38-1.67)。
全般的に糖尿病の有意な交互作用は認められなかった。

[CKDコホート]
ESRDの発症は平均3.8年の追跡で5,960例。
eGFRについては一般住民,高リスクコホートと同様の結果であったが,ACRについては,非糖尿病者のみで参照ポイントを設定したとき,ACR≧100mg/gで糖尿病患者のリスクが非糖尿病者を上回った一方,ACR<100mg/gでは糖尿病患者のほうがESRDのリスクは低かった。糖尿病患者,非糖尿病者それぞれで参照ポイントを設定した場合は,ACRの増加に伴い糖尿病患者におけるESRDリスクの増加が大きくなったものの,糖尿病の有意な影響は認められなかった。
全般的に糖尿病の有意な交互作用は認められなかった。
高血圧で層別すると,非高血圧例でeGFRと全死亡,心血管死との有意な関連がみられたが,ACRとはみられなかった。非糖尿病・高血圧のものでは,低eGFRは転帰とより強く関連した。

(収載年月2013.02)
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