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カリウム摂取量の増加が心血管疾患の危険因子と疾患に及ぼす影響
meta-analysis

カリウム摂取量の増加により成人高血圧患者の血圧は低下し,脂質値,カテコールアミン,腎機能に対する有害な影響はなく,脳卒中リスクの低下と関連した。
Aburto NJ, et al. Effect of increased potassium intake on cardiovascular risk factors and disease: systematic review and meta-analyses. BMJ. 2013; 346: f1378. PubMed

コメント

カリウム摂取はナトリウム排泄を促進させ,結果的に減塩による降圧効果を増強させることは理論的,実験的にはよく知られていたが,本メタ解析ではそのことを臨床的に明らかにして点で意味があるが,それぞれの試験でナトリウム摂取量の変化や生活指導への影響などにメタ解析に使用された論文の異質性の有無が不明である。
しかし,腎臓病などがなければカリウム摂取の増加は,血圧を下げ,脳卒中を減少させることが示された点では意味がある。(桑島


目的 2002年のJoint WHO/ Food and Agriculture Organization Expert Consultationが推奨するカリウム摂取量70-80mmol/日を多くの国は下回っており,英国,スペインなどが推奨する90mmol/日を摂取している国はさらに少ない。また米国,韓国などが推奨している120mmol/日摂取を報告している国はない。カリウム摂取量が少ないと血圧上昇,高血圧,脳卒中リスクの上昇と関連するため,摂取量増加によりこれらを予防できる可能性があるが,一貫した結果は得られていない。
WHOではカリウム摂取のガイドライン作成のため,急性疾患,腎機能障害のない健康な成人,小児を対象とした研究のシステマティックレビュー,メタ解析を実施した。ここでは成人のみの結果を示す。
エンドポイントは血圧,全死亡,致死的・非致死的心血管疾患(CVD),脳卒中,冠動脈疾患(CAD)。
対象 ランダム化比較試験(RCT)22試験・1,606例,コホート研究11研究・12万7,038例。
RCT,非RCT(カリウム摂取量を4週間以上増加する介入群1群以上と,カリウム摂取量が少ない対照群に割付け),コホート研究(カリウム摂取量を暴露として測定した前向きデザインの研究で,1年以上の追跡後に1つ以上のエンドポイントの結果を発表しているものとした)。
除外基準:入院患者を対象とした試験;疾患,薬物治療による尿中カリウム排泄障害など。
方法 Cochrane Central Register of Controlled Trials (2011年9月), Medline (2011年8月), Embase (2011年8月), WHO International Clinical Trials Registry Platform (2011年9月), Latin American and Caribbean Health Science Literature Database (2011年9月) を検索。さらに検索したレビューの参考文献も検索した。
RCTのカリウム摂取量は24時間尿中カリウム排出量より推定した。
結果 [カリウム摂取量の増加と血圧:RCT 21試験;並行比較7試験,クロスオーバー14試験]
カリウム摂取量の増加で収縮期血圧3.49mmHg(P<0.001;I ²=65%),拡張期血圧1.96mmHg低下(P=0.002;I ²=55%)
高血圧患者患者ではカリウム摂取量の増加により有意な降圧がみられたが(-5.32/-3.10mmHg),正常血圧例ではみられなかった(-0.09/-0.56mmHg)。
ベースライン時のカリウム摂取量(<50,50-80,>80mmol/日),介入群の達成カリウム摂取量(<90,90-120,120-155,>155mmol/日),達成カリウム摂取量の介入群と対照群の群間差(<30,30~60,>60mmol/日)別にみた結果,もっとも降圧が大きかったのは介入群の達成カリウム摂取量90~120mmol/日群で平均-7.16/-4.01mmHgで,用量依存性はみられなかった。

[カリウム摂取量の増加と全死亡,CVD]
脳卒中(コホート9研究):カリウム摂取量と脳卒中リスクは有意に逆相関した(リスク比0.76;95%信頼区間0.66-0.89)。
CVD(コホート4研究):カリウム摂取量との有意な関連はみられなかった(0.88;0.70-1.10)。
CAD(コホート3研究):カリウム摂取量との有意な関連はみられなかった(0.96;0.78-1.19)。
全死亡:メタ解析に組み込める試験がなかった。 

[カリウム摂取量増加の有害作用]
脂質値への影響:カリウム摂取量の増加による総コレステロール(RCT 4試験;-0.12mmol/L),LDL-C(1試験;-0.10 mmol/L),HDL-C(2試験;-0.01mmol/L),トリグリセライド(2試験;-0.11mmol/L)に対する有意な有害作用はみられなかった。
血漿カテコールアミン濃度(3試験):カリウム摂取量の増加による有意な影響はなかった。
腎機能(3研究):カリウム摂取量の増加によりクレアチニンが非有意ながら低下した。

[エビデンスの質]
GRADE(grading of recommendations assessment, development, and evaluation)法で評価したエビデンスの質は下記の通り。
カリウム摂取量増加の血圧への影響:moderate-high
脂質値,カテコールアミン,腎機能に対する影響:high
脳卒中に対する影響:low
CVD,CADに対する影響:very low

(収載年月2013.10)
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