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dabigatranと心筋梗塞リスク
meta-analysis

dabigatranは心筋梗塞(MI)リスクの有意な増加と関連。
Douxfils J, et al. Dabigatran etexilate and risk of myocardial infarction, other cardiovascular events, major bleeding, and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Am Heart Assoc. 2014; 3: e000515. PubMed

コメント

本研究は公表されているダビガトラン(dabigatran)を用いた主に第III相試験結果のメタ解析である。対象疾患は試験ごとに異なる。非弁膜症性心房細動も深部静脈血栓症も含まれる。研究の目的は各試験が示した「dabigatran群では心筋梗塞が多い」とのシグナルの真実性をメタ解析により検証することであった。筆者は,第III相試験に登録される症例と実臨床の症例には大きな差異があると理解している。厳密な組み入れ,除外基準を満たした第III相試験と複雑な日常診療にて出会う症例を組み入れた試験のメタ解析に,より「真実性」があると理解している。
本研究は第III相試験に組み入れられた症例の世界では,dabigatran服用者に心筋梗塞が多いことをより「真実性」高く示したと理解すべきである。日常臨床ではINR 1.6程度にコントロールしている症例も多い。「ワルファリン(warfarin)との比較において心筋梗塞が多い」と言っても,第III相試験の範囲内の話である。選択的,可逆的トロンビン阻害薬dabigatranは,冠動脈内の動脈硬化巣破綻部位などトロンビン産出速度の速い場所では効率的に作動しないことが想定される。人工弁症例の脳卒中予防効果がwarfarinに劣る事実も同様の理由にて説明可能である。dabigatranに限らず,可逆的に凝固因子の酵素作用阻害薬である新規の経口凝固薬では,局所の血栓性亢進には対応できないと筆者は想定している。日常臨床のwarfarinとの差異は今後解明すべき課題であるが,50年の歴史に耐えたwarfarinに勝る薬剤の開発は著しく困難であろう。(後藤


目的 dabigatranによるMI,その他の心血管イベント(CVD),重大な出血,全死亡のリスクを評価するため,最新の臨床試験を含む14のランダム化比較試験(RCT)を用いてメタ解析を実施した。
対象 14試験*。dabigatranと対照(非弁膜症性心房細動,静脈血栓塞栓症(VTE)・肺塞栓症患者の治療におけるwarfarin,人工関節置換術後のVTE予防におけるenoxaparin,抗血小板療法を受けた患者の冠イベント再発予防または抗凝固療法を受けた患者のVTE再発予防におけるプラセボ)を比較したRCTで,追跡期間が各群同等,MI・その他のCVD・重大な出血・全死亡のデータが得られたもの。
* dabigatran vs warfarin:PETRO,RE-LY,RE-COVER,RE-MEDY,RE-ALIGN,RE-COVER II;vs enoxaparin:BISTRO II,RE-NOVATE,RE-MODEL,RE-MOBILIZE,RE-NOVATE II;vs プラセボ:Fuji,RE-SONATE,RE-DEEM。
方法 PubMed,Scopus,Cochrane Database–Trials Resultsを検索(2013年12月8日まで)。過去3年間に国際学会で発表された演題の抄録も検索し,メタ解析の参考文献もハンドサーチ。解析には論文中のデータと,臨床試験登録および製薬会社が管理するレジストリのデータを使用した。
固定効果モデル(Peto法)とランダム効果モデル(逆分散法)を用いてオッズ比(OR)を算出。dabigatran群と対照群または各対照(warfarin,enoxaparin,プラセボ)群との比較を行い,さらにdabigatranの用量別(150 mgまたは110 mg 2回/日)解析も行った。
結果 [MI(12試験)]
dabigatran群294/25,286例(1.16%) vs 対照群108/14,909例(0.72%)。dabigatran群はリスクが有意に高かった(Peto法によるOR 1.34;95%信頼区間1.08-1.65,P=0.007;I ²=0%)。
warfarin群との比較結果(6試験)も同様であった(218/16,686例[1.31%]vs 80/10,157例[0.79%];1.41;1.11-1.80,P=0.005;I ²=23%)。

[その他の心血管イベント(4試験)]
844/16,284例(5.18%)vs 432/9,085例(4.76%)。
Peto法によるリスクの有意差は認められなかった(0.93;0.83-1.06,I ²=0%)。
warfarin群との比較結果(3試験)も同様であった(0.94;0.83-1.06,I ²=0%)。

[大出血(14試験)]
955/27,231例(3.51%) vs 553/15,425例(3.59%)。
dabigatran群は有意にリスクが低く(0.88;0.79-0.99,P=0.029,I ²=24%),warfarin群との比較結果(6試験)も同様であった(800/16,686例[4.79%]vs 494/10,157例[4.86%]:0.85;0.76-0.96,P=0.007,I ²=0%)。

[全死亡(11試験)]
990/24,330例(4.07%)vs 572/14,582例(3.92%)で,dabigatran群は有意にリスクが低かった(0.89;0.80-1.00,P=0.041;I ²=11%): 原著通り。
warfarin群との比較(6試験)では有意差はみられなかった(948/16,241例[5.84%]vs 554/10,087例[5.49%]:0.90;0.81-1.01,P=0.061;I ²=0%)。

[dabigatranの用量別解析]
・dabigatran 150mg 2回/日群 vs 対照群
dabigatran群はMIリスクが高く(Petoオッズ比:1.45,P=0.007),全死亡リスクが低かったが(0.88,P=0.045),その他の心血管イベントと重大な出血には有意差を認めなかった。
・dabigatran 110mg 2回/日群 vs 対照群
重大な出血リスクは固定効果モデルではdabigatran群が低かったが(0.82[P=0.007]),試験間の異質性が大きく(I ²=77%),ランダム効果モデルでは有意差は示されなかった。
その他のイベントには有意差を認めなかった。

[その他]
感度分析では,大出血:RE-LYを含む3試験,全死亡:RE-LYを含む2試験を除外した場合を除き結果は変わらなかった。
出版バイアスは認められなかった。

(収載年月2014.08)
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