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重症大動脈弁狭窄に対するTAVR施行患者における永久的ペースメーカー植込みの予測因子
meta-analysis

永久的ペースメーカー植込みは17%。男性,ベースライン時の伝導障害,手技中の房室ブロックが予測因子。
Siontis GC, et al. Predictors of Permanent Pacemaker Implantation in Patients with Severe Aortic Stenosis Undergoing TAVR: A Meta-Analysis. J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 129-40. PubMed

コメント

重症症候性大動脈弁狭窄症に対するTAVRは急速に世界に広まっている。TAVRの合併症の一つが房室ブロックであり,17%の症例にペースメーカー(PM)が術後挿入されている。今回PM挿入の予測因子をメタ解析しており,全症例では男性,1度房室ブロック,左脚前枝ブロック,右脚ブロック,周術期房室ブロックが有意な因子として浮かび上がった。周知の通り,Medtronic CoreValve Revalving System(MCRS)がEdwards SAPIEN Valve (ESV)よりPM挿入は2.5倍の頻度であり,PM挿入の予測因子はMCRSでは同様であったが,ESVでは右脚ブロックのみに有意であった。MCRSとESVの症例を合わせて予測因子を検討しても意味がないかもしれない。
TAVR後に左脚ブロックが生じることはよく知られている。MCRSでは左脚後枝がより障害を受けやすいので左脚前枝ブロックが予測因子になるがESVでは左脚の前枝と後枝への障害程度は同様でより軽いためにPM挿入の頻度が低く,右脚ブロックのみが予測因子として残ったのであろう。MCRSはself-expandingで左室流出路により深く挿入されることが問題であるが,術直後の浮腫が伝導障害の原因である可能性もある。術後の経過を見て不要なPM挿入が行われていないかどうかの検証は必要である。PM挿入は経済的にも痛手であるが,dys-synchronyなどにより予後に不利益があるかどうかの検討も期待される。男性がPM挿入の予測因子であるのは,より大きいサイズのデバイスを用いることに由来するのであろう。
今回のメタ解析は想定される予測因子の中で解析可能な因子のみしか検討していない。どのメタ解析論文にもlimitationはあるが,TAVR症例の予後改善やデバイス改良につながる小さいながらも有益な一歩であると思われる。(星田


目的 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の施行の増加に伴い,TAVRに関連する合併症も認められるようになってきた。永久的ペースメーカー(PPM)の植込みが必要になる房室伝導障害もTAVRの合併症である可能性があり,合併例患者の同定は非常に重要になってきている。しかし,デバイスによるPPM植込み率の差(Edwards SAPIEN Valve[ESV]:5-12%,Medtronic CoreValve Revalving System[MCRS]:登録研究によると<24-33%)や,データが少なく主に小規模試験の結果であることなどから,PPMの予測因子は明確になっていない。
TAVR後のPPM植込みの臨床的に有用な予測因子を推定する。
対象 11,210例・41トライアル。TAVR後の房室伝導あるいは心調律異常が評価され,その後PPM植込みが必要になったもの。2005-’11年に患者登録,2009年-’13年に発表されたもの。
■患者背景:平均年齢79-84歳,女性54%,心房細動25%,左脚ブロック(LBBB)12%,右脚ブロック(RBBB)10%,経大腿アクセス73%;経心尖アクセス23%。
方法 PubMed,EMBASEで2013年10月までに発表された,TAVR後のPPM植込みによる結果が報告されているトライアルをシステマティックに検索し,予測因子(患者・手技背景)の粗データを抽出し,変量効果モデルでPPM植込みの粗リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
結果 TAVR後のPPM植込みは,1,917例(17%)。使用デバイス別にみるとMCRS例で28%,ESV例で6%(いずれも中央値)。もっとも多かった適応は完全房室ブロック。

[PPM植込みとの関連因子]
・14の予測因子を解析した結果,PPM植込みリスクが有意に高かったのは,男性(RR:1.23;95%CI 1.10-1.38),第1度房室ブロック(1.52;1.15-2.01),左脚前枝ブロック(1.62;1.17-2.25),RBBB(2.89;2.36-3.54),周術期房室ブロック(3.49;2.49-4.89)。トライアルの異質性は中等度-低(I ²=0-44%)。
・MCRS使用例はESV使用例よりリスクが2.5倍高かった(2.54;2.08-3.12)。トライアルの異質性は低かった(I ²=14%)。
・>80歳,左脚後枝ブロック,PR間隔延長(>200ms)例でのリスク上昇はなかった。
・MCRS使用例のみで検証しても,男性(RR 1.29),第1度房室ブロック(1.65),RBBB(2.72)は有意にリスクが高かった。経大腿アクセスは経鎖骨下アクセスにくらべリスクが低かったものの有意ではなかった(0.54;0.28-1.04,P=0.07)。
・ESV使用例では男性,心房細動,アクセス箇所による有意なリスク上昇はなかった。

(収載年月2014.11)
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