2剤併用抗血小板療法(DAPT)期間延長による,aspirin単剤または短期(<6ヵ月)DAPTと比較した全死亡,心血管死,非心血管死リスクの増加は認められなかった。 Elmariah S, et al: Extended duration dual antiplatelet therapy and mortality: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2014 Nov 16 PubMed
コメント
ステント,特に DES後の至適DAPT期間については,日欧米のガイドラインで微妙に異なり,かつこれらが第一世代DESの成績に基づいていることから臨床現場との乖離が生じている。加えて先のAHA 2014で発表された「DAPT試験」が形の上では長期継続により虚血イベントを抑制したため,混乱に拍車がかかる結果となった。 本メタ解析は「DAPT試験」を受け,aspirin+P2Y12受容体阻害薬(ほとんどが clopidogrel)継続延長の是非を死亡(心臓死・非心臓死)に焦点を当てて解析したメタ解析である。DAPT試験を含む14試験(n=69,644)のうちPAD手術例(CASPAR),ラクナ梗塞例(SPS3),動脈硬化性疾患高リスク例(CHARISMA),心房細動例 (ACTIVE)を除く10試験(n=42,616)が冠動脈疾患(PCI後・ACS)を対象としている。試験ごとに継続期間・延長期間がまちまち,使用されているDESもさまざまで,さらにDAPT vs aspirin単剤の試験が混入するなど一般論に落とし込むには疑問の余地もあるが,反面その多様性ゆえに実臨床での説得力が増す。そして各試験単独でもメタ解析の結果からもDAPT継続・延長の予後改善効果は否定された。このメタ解析を最後にclopidogrelによるDAPT継続の議論はそろそろ終止符を打ってもいいのではないかとも思う。 一方,総論として一定の方向性が示されたとは言え,血栓症抑制と出血性合併症のリスク,すなわちrisk-benefit ratio(net benefit)の臨界点は症例によって異なるはずである。ステント留置期間だけでなく,リスク(冠動脈疾患重症度,ステントの種類・留置手技,他の動脈硬化性疾患の有無,出血性リスク等々)に応じて差別化した検討が必要であり,DAPTの議論はそういう時期に来ていると思われる。非弁膜症性心房細動におけるCHADS2 scoreのような明瞭なリスクマーカーはできないものだろうか?(中野)
[その他] funnel plotにより出版バイアスは認められなかった。 メタ回帰分析で,DAPT期間の差は一次エンドポイントに影響を及ぼさなかった。
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