心筋梗塞既往患者における長期DAPTによる二次予防
meta-analysis
心筋梗塞既往のある安定高リスク患者において,1年以上のDAPTはaspirin単独投与にくらべ虚血イベントが少なかった。大出血は増加したが,致死的出血または非CV死は増加しなかった。
Udell JA, et al. Long-term dual antiplatelet therapy for secondary prevention of cardiovascular events in the subgroup of patients with previous myocardial infarction: a collaborative meta-analysis of randomized trials. Eur Heart J. 2015; PubMed
目的 |
|
心筋梗塞(MI)発症患者での抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は1年間のみの実施が強く推奨されており,PCI施行患者における1年以上継続の推奨度も低い。長期DAPTの決定的なデータがないなか,2つの大規模ランダム化比較試験(RCT)から,MI発症後およびPCI後1年以上のDAPT継続で,出血は増加するもののアテローム血栓性イベントは抑制されることが発表された(N Engl J Med. 2015; 372: 1791-800, N Engl J Med. 2014; 371: 2155-66)。
MI既往患者における1年以上の長期DAPTの有効性とリスクを検証するため,RCTのメタ解析を行った。
一次エンドポイントは主要有害心血管イベント(MACE:心血管[CV]死,非致死的MI,非致死的脳卒中の複合エンドポイント)。 |
|
対象 |
|
6試験*・33,435例(DAPT群20,203例,aspirin単独投与群13,232例)。MI発症例または既往例において1年以上のDAPT群とaspirin単独群の心血管疾患(CVD)二次予防を比較したRCT。盲検化と出版の有無は問わなかった。
除外基準:追跡期間<12ヵ月のMI発症患者対象のDAPT検討試験,PCIを施行した安定虚血性心疾患患者のみが対象のRCT,経口抗凝固薬治療を検討したRCT。
* CHARISMA MI, PRODIGY, ARCTIC-Interruption, DAPT, DES-LATE, PEGASUS-TIMI 54
■試験背景:平均追跡期間31ヵ月,達成DAPT期間の平均差30ヵ月。MI既往例対象の1試験が全症例の63.3%を占め,残りの5試験(36.7%)はサブグループ,うち1試験がMI既往例(3,846例[11.5%]),4試験は最近の急性冠症候群に対するPCI施行例(8,427例[25.2%])。
患者背景:平均年齢64歳,女性23.6%,体重81.4kg,PCI施行・既往例83.9%,糖尿病29.6%,慢性腎臓病18.6%,ST上昇型・Q波MIまたはその既往48.9%,不安定狭心症7.1%,脳卒中・一過性脳虚血発作既往2.6%,CABG既往7.4%。 |
|
方法 |
|
OVID Medline(1950-2015年4月2日)とCochraneを検索。選択された論文のオンラインsupplementary material,添付資料,参考文献と,2014-’15年の心血管学術集会の抄録,clinicaltrials.govも調査。発表されたデータが入手できない場合は試験責任医師に連絡した。 |
|
結果 |
|
[MACE]
MACE発生は2,273例。
長期DAPT群のほうがaspirin単独群より有意に少なかった(長期DAPT群1,286例[6.37%]vs aspirin単独群 987例[7.46%]:リスク比0.78;95%信頼区間0.67-0.90,P=0.001;絶対リスク差[ARD]1.09%,平均31ヵ月でMACE 1例を予防するためのNNTは91)。
CV死(2.3% vs 2.6%:0.85;0.74-0.98,P=0.03;ARD 0.26%,NNT 380),非致死的MI(0.70;0.55-0.88,P=0.003;0.84%,120),非致死的脳卒中(0.81;0.68-0.97,P=0.02;0.31%,324)も長期DAPT群のほうが有意に少なかった。
[大出血]
長期DAPT群のほうが有意に多かったが(1.85% vs 1.09%:1.73;1.19-2.50,P=0.004;0.76%,number needed to harm[NNH]132),頭蓋内出血(0.41% vs 0.31%:1.34;0.89-2.02,P=0.17),致死的出血(0.14% vs 0.17%:0.91;0.53-1.58,P=0.75)は両群ともに少なく有意差はなかった。
[その他]
非CV死(1.03;0.86-1.23),全死亡(0.92;0.83-1.03)に有意な両群間差はみられなかった。
PCI施行例におけるdefinite・probableステント血栓症の発生は少なかったが,1年後以降の遠隔期ステント血栓症発生率は長期DAPT群のほうが有意に低かった(0.50;0.28-0.89,P=0.02;0.73%,137)。
[感度解析]
試験間の異質性は小さく,出版バイアスはみられなかった。6試験の統合解析からいずれか1試験を除外しても,PEGASUS-TIMI 54とDAPTの2試験を除外しても,長期DAPT群の一次エンドポイントに対する有効性は有意であった。また別の2試験の1年後を起点とするランドマーク解析の結果を加えた解析結果も,サブグループ解析の結果も一貫していた。
|
|
|
|