経カテーテル的大動脈弁置換術における性差
pooled analysis
女性は男性にくらべ出血イベント,血管合併症,脳卒中の発生率が高かったにもかかわらず,TAVR後の長期生存の独立した予測因子であった。
O'Connor SA, et al. Revisiting sex equality with transcatheter aortic valve replacement outcomes: a collaborative, patient-level meta-analysis of 11,310 patients. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 221-8. PubMed
目的 |
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経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)後の転帰に性差が及ぼす影響については,議論がわかれている。
個別患者データを用いたcollaborative meta-analysisにより,TAVR後の短期・長期死亡率および安全性に対する性差の影響を評価する。
一次エンドポイントは,全死亡。
安全性のエンドポイントは,30日後の主要血管合併症,出血イベント,脳卒中,心筋梗塞の複合エンドポイント(各試験の定義とValve Academic Research Consortium[VARC]基準による)。 |
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対象 |
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5研究(登録期間2005年1月-’12年12月)・11,310例(女性5,502例[48.6%])。下記の基準を満たすランダム化比較試験・登録研究・TAVRデータが報告されたサブ解析:経大腿動脈・心尖・大動脈・頸動脈・鎖骨下動脈アプローチによるTAVRを施行する重度の大動脈弁狭窄患者が対象,単群コホートまたは無作為・非無作為割付けでのTAVRと外科的大動脈弁置換術の比較試験,短期(30日後・入院中)および1年後の全死亡データが得られたもの。
除外基準:出版されていない学会抄録,対象<200例,多変量調整を行っていない試験など。
■患者背景:平均年齢(女性83.3歳, 男性81.6歳)*,心筋梗塞(14.6%, 28.6%)*,BMI(26.5kg/m², 26.6kg/m²), 喫煙歴(21.9%, 39.3%)*, 末梢血管疾患(PAD)(24.5%, 35.4%)*, 糖尿病(24.9%, 29.5%)*,脳卒中既往(15.2%, 17.2%, P=0.005), PCI歴(17.6%, 23.4%)*, CABG(14.1%, 41.1%)*, 肺疾患(28.2%, 31.4%)*, 腎機能障害(66.1%, 64.3%, P=0.041), 冠動脈疾患(CAD)(38.6%, 57.3% ; 3枝疾患 : 10.8%, 26.3% ; 2枝病変 : 11%, 15.8%)*, EF<50%(24.4%, 41.5%); EF<30%(4.6%, 10%)*, logistic EuroSCORE(22.2, 23.9)*, 大動脈弁圧較差(61.2mmHg, 55.8mmHg)*, 弁口面積(0.7cm², 0.8cm²)*, 弁輪径(20.7mm, 22.8mm)*, 肺動脈圧(51mmHg, 47.4mmHg)*。
手技背景 : アプローチ(心尖 : 22.5%, 23.3% ; 大腿動脈 : 70.4%, 67.9%[P=0.004]; 鎖骨下動脈 : 4%, 6.1%*), 弁の種類(CoreValve : 35.2%, 31.4% ; SAPIEN : 64.8%, 67.9% ; Portico : 0%, 0.7%)*, 弁サイズ(23mm : 52.9%, 10.8% ; 26mm : 38.5%, 56.2% ; 29mm : 8.2%, 29.8%)*, 大腿動脈径(左 : 7.2mm, 7.9mm ; 右 : 7.5mm, 7.7mm)*。* P<0.001 |
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方法 |
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MEDLINE,Embase,Cochrane Controlled Trials Registryを検索(2002年1月-‘14年6月)。 |
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結果 |
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[手技成績]
デバイス成功率(人工弁の血管アクセス・デリバリー・展開成功と正しい位置への植込み,人工弁の機能正常は女性97.3%,男性96.9%。
[一次エンドポイント]
短期死亡には性差はみられなかったが(<72時間の手技関連死:女性2.6% vs 男性2.2%[P=0.24],30日後の死亡:6.5% vs 6.5%[P=0.93]),Kaplan-Meier生存解析(追跡期間中央値387日)では女性の生存率が有意に高く(log-rank検定P<0.001),1年,2年,5年生存率は女性がそれぞれ82.7%,74.0%,43.6%,男性は78.2%,67.8%,38.9%であった。
Coxモデルで,女性は弁の種類やアクセスルートを問わず良好な全死亡の独立関連因子であった(調整ハザード比0.79;95%信頼区間0.73-0.86,P=0.001)。
その他に死亡と関連した因子は,BMI(0.98;0.98-0.99),PAD(1.11;1.01-1.21),肺疾患(1.32;1.22-1.44),腎機能障害(1.22;1.11-1.35),経大腿動脈アクセス(0.77;0.71-0.85),大動脈閉鎖不全≧グレード2(1.74;1.46-2.07)。
[安全性のエンドポイント]
女性は男性より30日後の主要血管合併症(6.3% vs 3.4%,P<0.001),大出血(10.5% vs 8.5%,P=0.003),脳卒中(4.4% vs 3.6%,P=0.029),心タンポナーデ(1.3% vs 0.7%,P=0.002)の発生率が高かった一方,重度の大動脈弁閉鎖不全(グレード≧2;19.4% vs 24.5%,P<0.001),新規ペースメーカー植込み(11.9% vs 15.3%,P<0.001)が少なかった。
弁移動,外科的置換術への切り替え(1% vs 0.9%),手技関連死には性差はみられなかった。
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