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糖尿病患者におけるPCSK9阻害薬evolocumab
pooled analysis

2型糖尿病患者において,PCSK9阻害薬evolocumab*群でアテローム生成リポ蛋白はプラセボ群,ezetimibe群にくらべて著明に低下した。低下率は非2型糖尿病患者と変わらず,サブグループによる差もみられなかった。

* PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)はセリンプロテアーゼの一種で,肝臓で合成され血中に分泌される蛋白である。LDL受容体に結合し,LDL受容体の分解を促進する蛋白として知られており,PCSK9の機能獲得型変異をもった先天性疾患がまさに家族性高コレステロール血症と表現型が同一であることから発見された。 evolocumabはこの蛋白に対するモノクローナル抗体製剤で,第II相試験においてLDL-Cの有意な低下と良好な安全性が示されている。
Sattar N, et al. Lipid-lowering efficacy of the PCSK9 inhibitor evolocumab (AMG 145) in patients with type 2 diabetes: a meta-analysis of individual patient data. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016; 4: 403-10. PubMed


目的 PCSK9阻害薬はLDL-Cとその他の脂質を下げるが,一般にLDL-Cよりnon-HDL-Cの増加が顕著な2型糖尿病患者における有効性は明らかでない。
PCSK9阻害薬evolocumabの脂質低下効果が2型糖尿病の有無により異なるかを検討するため,evolocumabとプラセボ,ezetimibeを比較したランダム化臨床試験(RCT)の患者個人データを用いて統合解析を行った。
対象 RCT 3試験*・2型糖尿病413例,非2型糖尿病2,119例。18-80歳の2型糖尿病・非2型糖尿病患者においてevolocumab 12週投与の脂質パラメータ(LDL-C,non-HDL-C,総コレステロール(TC),トリグリセライド(TG),リポ蛋白(a),HDL-C)に対する効果をプラセボ・ezetimibeと比較した第III相RCTで,2012年1月1日-’15年2月28日に発表されたもの。
* LAPLACE-2,RUTHERFORD-2,GAUSS-2
除外基準:家族性高コレステロール血症ホモ接合体患者が対象の試験。
■患者背景:平均年齢(2型糖尿病患者61.3歳,非2型糖尿病患者58.4歳),男性(両群とも55%),BMI(32.0kg/m²,28.6kg/m²),血圧(130.3/78.6mmHg,128.4/78.5mmHg),高血圧(83%,49%),喫煙(16%,14%),冠動脈疾患(32%,23%),HbA1c(6.6%,5.5%),空腹時血糖(128mg/dL,95mg/dL),PCSK9(4.9nmol/L,5.0nmol/L),LDL-C(112mg/dL,128mg/dL),non-HDL-C(147mg/dL,155mg/dL),TC(189mg/dL,209mg/dL),TG中央値(151mg/dL,115mg/dL),リポ蛋白(a)中央値(35nmol/L,38nmol/L),HDL-C(46mg/dL,54mg/dL)。
方法 MEDLINE,Embaseを検索。
evolocumab 1回/2週投与と1回/月投与のデータは同等だったことから,統合して解析した。
結果 [脂質パラメータの変化率]
12週後のLDL-Cおよびその他の脂質の平均変化率は,2型糖尿病の有無を問わず同等で,evolocumab群はプラセボ群,ezetimibe群にくらべ有意に変化が大きかった。2型糖尿病患者(非2型糖尿病患者)におけるevolocumab群と他群との変化率の差は下記の通り。TGのezetimibe群との比較を除く全P<0.0001。
LDL-C:vs プラセボ群-60%(-66%);vs ezetimibe群-39%(-40%)
non-HDL-C:-55%(-58%),-34%(-35%)
TC:-38%(-40%),-24%(-25%)
リポ蛋白(a):-31%(-29%),-26%(-30%)
HDL-C:7%(7%),8%(6%)
TG:-23%(-17%),-9%(-3%)
いずれのパラメータにおいても,2型糖尿病患者と非2型糖尿病患者の有意な交互作用は認められなかった。

[サブグループ解析]
2型糖尿病患者におけるevolocumab群のLDL-C低下率に,ベースライン時のインスリンの使用,HbA1c,腎機能,心血管疾患既往による違いはなかった。

[有害事象]
注射部位反応(2型糖尿病:evolocumab群1% vs プラセボ群0% vs ezetimibe群3%;非2型糖尿病:3% vs 2% vs 3%),筋肉痛(<1% vs 1% vs 4%;3% vs 2% vs 8%)などの有害事象に有意な群間差はみられず,新たな安全性のリスクも同定されなかった。

(収載年月2016.08)
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