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多枝病変患者におけるCABGまたはBMS後の転帰に対する年齢の影響
pooled analysis

多枝疾患に対してCABGとPCIのどちらが相対的に有効かは,年齢により異なる。高齢者にはCABG,若年者にはPCIのほうが好ましい。
Flather M, et al. The effect of age on outcomes of coronary artery bypass surgery compared with balloon angioplasty or bare-metal stent implantation among patients with multivessel coronary disease: a collaborative analysis of individual patient data from 10 randomized trials. J Am Coll Cardiol. 2012; 60: 2150-7. PubMed

コメント

人口の高齢化と冠動脈イベント発症後の生存率の向上により,CABGやPCIを受ける年齢が高くなっている。多枝病変例に対するCABGとPCIの比較はランダム化比較試験(RCT)で多数行われているが,年齢が両治療の転帰に及ぼす影響は明らかではない。10のRCTによる蓄積症例のメタ解析において,多枝病変例ではCABGとPCIで死亡率に差を認めなかったが,年齢により転帰が異なる可能性が示された。本研究は年齢に注目して,CABGとPCIの臨床転帰比較をメタ解析により行った。その結果,高齢者(65.2歳以上)では死亡・心筋梗塞の発症リスクがCABGでPCIより有意に低かった。年齢とCABGの優位性との関連において,糖尿病の有無による差は認められていない。高齢者では若年者より冠危険因子が多く心血管イベント発症のハイリスク層であり,CABGの効果がより発現しやすいと考えられる。冠動脈硬化病変の指標(SYNTAXスコアなど)が計測されていればより明確になるであろう。
CABGとPCIの臨床転帰における年齢の影響を評価した臨床研究はいくつか報告されているが,年齢の相互作用について言及されていないか,若年者の結果との比較がなされていない。CREDO-Kyoto研究において75歳以上ではCABGがPCIより優位(ハザード比0.73)であるが,年齢による相互作用は有意ではなかった。ハードエンドポイントである死亡や心筋梗塞では高齢者のCABGの優位性は明らかではあるが,狭心症や冠血行再建術は全年齢層でCABGが優位であった。しかし,冠血行再建術の低下は多変量解析ではCABGと高齢が関連しており,高齢者では冠血行再建術よりも薬物治療がより選択されやすいと考えられる。
本研究では,80歳以上の高齢者での評価や高齢と関連しうる他の因子(腎機能,貧血など)の影響は明らかではない。DESとCABGの比較(SYNTAX, CARDIAなど)メタ解析の結果が興味深いが,BMSとDESでは死亡率に差はみられないので,高齢者でのCABGの優位性はDES時代でも変わらないと考えられる。 (星田


目的 CABGまたはPCIを施行する患者は高齢化している。多くのランダム化比較試験(RCT)で多枝病変に対するCABGとPCIの転帰が比較されているが,それらの結果に対する年齢の影響は明らかでない。2009年に,多枝疾患に対するCABGとPCIを比較したRCT 10試験のcollaborative meta-analysisで,全般的に死亡率の差はないものの,両治療間の相対的な有効性は年齢により異なる可能性が示された(04-06.html)。
同じcollaborative meta-analysisから,死亡に対するCABGとPCIの有効性に年齢が及ぼす影響を,さらに詳細に検討した。
一次エンドポイントは全死亡。
対象 7,812例。10試験:多枝疾患に対するCABGとPCIを比較したRCT。
■患者背景:平均年齢(≦56.2歳群[2,602例]49.8歳,56.3-65.1歳群[2,602例]61.0歳,≧65.2歳群[2,602例]70.5歳),女性(15%,23%,32%),糖尿病(13%,16%,19%),現喫煙(36%,23%,15%),高血圧(37%,46%,52%), 高コレステロール血症(56%,51%,47%),末梢血管疾患(7%,10%,14%),不安定狭心症(39%,39%,46%),MI既往(49%,45%,42%),うっ血性心不全(2%,3%,5%),罹患枝数(1枝:10%,7%,3%;2枝:56%,55%,58%;3枝:34%,37%,39%),左前下行枝近位部病変(52%,51%,51%)*,生存者追跡期間(6.4年,6.0年,5.6年)。
*有意差なし。その他はすべてP<0.0001。
方法 2009年の発表をご参照ください。
対象者の年齢を三分位値により層別して解析(≦56.2歳,56.3-65.1歳,≧65.2歳)。
結果 [一次エンドポイント]
死亡率は≦56.2歳ではPCI群がCABG群よりも低かった(8% vs 11%)が,≧65.2歳ではCABG群のほうが低く(24% vs 20%),患者の年齢は死亡に対するCABGとPCIの相対的有効性に有意な影響を及ぼすことが示された(交互作用P<0.01)。
CABG群 vs PCI群の調整後ハザード比(HR)は,≦56.2歳:1.23(95%信頼区間0.95-1.59),56.3-65.1歳:0.89(0.73-1.10),≧65.2歳:0.79(0.67-0.94)と加齢に伴い低下していき,>59歳でHR<1となった。

[二次エンドポイント:1年後の死亡+MI,再血行再建術,狭心症]
死亡+MIも死亡と同様の結果で,CABG群 vs PCI群の調整後HRはそれぞれ1.22(1.00-1.47),0.90(0.76-1.06),0.85(0.73-0.98)であった。
一方,再血行再建術(治療と年齢の交互作用P=0.24)と狭心症(P=0.94)については,年齢の影響は認められなかった。

[サブグループ]
糖尿病,非糖尿病ともに,高齢者でCABG群のほうが死亡および心イベントリスクが低い傾向が示されたが,CABG群のHR<1となる年齢は,非糖尿病者が>63歳,糖尿病患者は>47歳であった。
バルーン血管形成術によるPCI(6試験)とベアメタルステント(BMS)によるPCI(4試験)では,いずれにおいてもCABG vs PCIの死亡HRは加齢とともに低下し,バルーン時代とBMS時代の違いはみられなかった。

(収載年月2013.04)
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