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ESC 2019 欧州心臓病学会 2019.8/31〜9/4 パリ |
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8月31日-9月4日, パリで欧州心臓病学会(ESC 2019)が開催されました。ここでは, 26のHot Line Sessionの概要をご紹介します。
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Hot Line Session 1
THEMIS/THEMIS-PCI
A Study Comparing Cardiovascular Effects of Ticagrelor Versus Placebo in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus
概 要 |
年齢50歳以上の2型糖尿病を合併した安定冠動脈疾患症例において, チカグレロル+アスピリンによるDAPTは, アスピリン単剤にくらべ, 虚血性心血管イベントの発生を抑制したものの, TIMI基準の大出血および頭蓋内出血は増加(THEMIS)。ただし, PCI施行歴のある症例においては, PCI施行歴のない症例にくらべ, 正味の臨床ベネフィットを改善した(THEMIS-PCI)。
追跡期間中央値:3.3年。42カ国が参加した国際共同二重盲検プラセボ対照試験(Phase III)。 |
PARAGON -HF
The Prospective Comparison of ARNI with ARB Global Outcomes in HF with Preserved Ejection Fraction
概 要 |
年齢50歳以上の, 左室駆出率が保たれた慢性心不全[HFpEF(LVEF≧45%)]4,822例において, angiotensin receptor-neprilysin inhibitor/sacubitril-valsartanは, バルサルタン単剤にくらべ, 一次エンドポイントである心不全による入院および心血管死の減少について統計学的な有意差を認めるには至らなかった。しかし, NYHA心機能分類の改善, 腎機能悪化の抑制, KCCQスコア改善については, sacubitril-valsartanを支持する結果が得られた。追跡期間中央値35ヵ月。43ヵ国が参加した国際共同ランダム化二重盲検試験(Phase III)。 |
COMPLETE
The Complete versus Culprit-Only Revascularization Strategies to Treat Multivessel Disease after Early PCI for STEMI
概 要 |
多枝病変STEMIに対する完全血行再建は, 心血管死, MIの新規発症, 虚血による再血行再建において, 施行のタイミング*にかかわらず責任病変のみのPCIに優る。責任病変のみのPCIに成功して72時間以内の多枝病変STEMI患者4,041例を対象として, 症候や虚血の有無にかかわらず完全血行再建を施行する群と責任病変のみに施行したprimary PCI後は薬物療法のみで経過をみる群(責任病変のみPCI)にランダム化。大出血, 脳卒中, ステント血栓症については, 両群間に有意差はなかった。追跡期間中央値3年。
*初回の入院中(責任病変のみへのPCI施行後の日数中央値1日)または退院後(退院後日数の中央値23日) |
DAPA-HF
Study to Evaluate the Effect of Dapagliflozin on the Incidence of Worsening Heart Failure or Cardiovascular Death in Patients With Chronic Heart Failure
概 要 |
心不全の標準治療へのSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの上乗せは, 左室駆出率の低下した慢性心不全[HFrEF(LVEF≦40%)]症例において, プラセボにくらべ, 心血管死および心不全悪化によるイベント(入院や緊急受診)を抑制した。この効果は, 糖尿病の有無にかかわらず一貫していた(ただし, 1型糖尿病は対象外)。また, 8ヵ月後のKCCQスコア改善率もダパグリフロジンがプラセボを上回った。本試験により, ダパグリフロジンがHFrEF患者に対する有望な治療薬であることが示唆された。追跡期間中央値18.2ヵ月。 |
Hot Line Session 2
NZOTACS
The New Zealand Oxygen Therapy in Acute Coronary Syndromes
概 要 |
ACSまたはACS疑い例に対する酸素投与は, 標準プロトコル(酸素飽和度が<90%の低酸素血症の場合に酸素投与)とくらべ, 30日後の全死亡において有意差を示さなかった。 |
CONDI-2/ERIC-PPCI
Effect of Remote Ischaemic Conditioning on Clinical Outcomes in STEMI Patients Undergoing PPCI
概 要 |
primary PCI後のSTEMI症例に対する標準治療への遠隔虚血コンディショニング(RIC)*の上乗せは, 標準治療単独にくらべ, 1年後の心臓死または心不全による入院を抑制しなかった。また, 二次エンドポイントである30日後の心臓死および心不全による入院, 30日後および1年後のMACCEについても同様であった。
*心臓から離れた部位に短時間の虚血を誘発することにより心筋の再灌流障害を予防するアプローチのこと。
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ISAR-REACT 5
Prospective, Randomized Trial of Ticagrelor Versus Prasugrel in Patients With Acute Coronary Syndrome
概 要 |
冠動脈造影などの侵襲的評価を予定のACS症例(STEMI, NSTEMI, 不安定狭心症)における2つの治療戦略(チカグレロル vs. プラスグレル)のhead-to-head試験。1年後の死亡, MI, 脳卒中は, プラスグレル群にくらべ, チカグレロル群で有意に多かった。一方, 安全性のエンドポイントである大出血は, 両群間で有意差は示されなかった。
多施設共同ランダム化非盲検試験(Phase IV)。 |
HiSTORIC
High-Sensitivity cardiac Troponin On presentation to Rule out myocardial InfarCtion: A stepped-wedge cluster randomised controlled trial
概 要 |
ACS疑いの症例に対する高感度トロポニンI測定による早期のMI除外診断は, 標準プロトコルにくらべ, 救急外来滞在時間を短縮し, 再入院を減少させた。また, 安全性のエンドポイントである退院後30日および1年時点のMI発症および心臓死も高感度トロポニン測定群で低かった。 |
Hot Line Session 3
Combined effect of lower LDL-C and lower SBP on the lifetime risk of cardiovascular disease
概 要 |
遺伝子レベルでのLDL-C低値および収縮期血圧(SBP)低値への生涯曝露は, 心血管疾患(心臓死, 非致死性MI, 冠血行再建)リスク低下に関連する。英国Biobankに登録の43万8,952人分の遺伝学的データから分析。平均年齢は, 65.2歳。女性 54.1%。2万4,980人が主要な心イベント既往。LDL-Cに関連する遺伝子バリアントと収縮期血圧(SBP)に関連する遺伝子バリアントから, LDL-C genetic scoreおよびSBP genetic scoreを算出。LDL-C genetic score, SBP genetic scoreが中央値より高いと主要心イベントリスクは低下。 |
AFIRE
Atrial Fibrillation and Ischemic Events with Rivaroxaban in Patients With Stable Coronary Artery Disease
概 要 |
冠動脈インターベンション後1年以上が経過した, 心房細動を合併した安定CAD症例におけるリバーロキサバンの単剤投与は, 有効性の一次エンドポイント(脳卒中, 全身塞栓症, MI, 血行再建が必要な不安定狭心症, 全死亡)において, リバーロキサバン+抗血小板薬(アスピリンまたはP2Y12阻害薬)の併用療法に劣らない。また, 安全性のエンドポイントである大出血(ISTH基準)において優越性が認められた。本試験は, 日本人を対象として行われた多施設共同研究(登録患者2,236例)。追跡期間中央値24.1ヵ月。 |
GALACTIC
Goal-directed AfterLoad Reduction in Acute Congestive Cardiac Decompensation: a randomized controlled trial
概 要 |
救急外来に搬送された急性心不全患者に対する早期の目標指向型の治療(高用量かつ個別化された血管拡張薬の投与:ニトログリセリン, ヒドララジン, ACE阻害薬, ARB)は, 標準治療にくらべ, 180日後の全死亡および再入院を改善しなかった。 |
Salt substitution and community-wide reductions in blood pressure and hypertension incidence
概 要 |
ペルーの地域住民(食塩消費量が多く, 高血圧患者が多い地域)を対象とした研究。食塩の代替品(商品名:Salt Liz:ナトリウム75%+カリウム25%)の利用は, 血圧を低下させ, 高血圧の新規発症も抑制した。血圧の低下は, ベースラインで高血圧であった集団でいっそう顕著であった。 |
HOPE 4
The Heart Outcomes Prevention and Evaluation 4 study
概 要 |
中所得国における地域を基盤とした非医師の医療従事者(NPHWs)による高血圧患者への包括的な介入(タブレット端末による管理, 意思決定支援, カウンセリング, 医師の監督の下での降圧薬およびスタチンによる薬物治療など)は, 医師による標準的な介入と比較して, 血圧コントロールを改善し, 心血管疾患リスクを低下させた。一次エンドポイントは, 12ヵ月後のフラミンガムリスクスコアの平均変化率。この介入による安全性に問題はなかった。 |
Hot Line Session 4
BB-meta-HF
Beta-blockers in high-risk heart failure patients with reduced ejection fraction and moderately-severe renal dysfunction
概 要 |
洞調律のHFrEF患者において, β遮断薬は死亡抑制効果を示し, さらに中等度~高度の腎機能低下を伴う例においても同様であった。交絡因子で調整後も, β遮断薬はプラセボにくらべ, 死亡リスクを大幅に低下させた。また, 腎障害例においてもeGFRの低下や有害事象の増加はみられなかった。
洞調律のHFrEF患者に対するβ遮断薬の効果を検証した10試験16,740例で検討。年齢中央値65歳。女性23%。追跡期間中央値1.3年。 |
SYNTAXES
Ten-Year Survival after Coronary Artery Bypass Grafting versus Percutaneous Coronary Intervention: The SYNTAX Extended Survival study
概 要 |
左主幹部病変および3枝病変におけるPCI vs. CABGを比較したSYNTAX試験10年後の追跡調査結果(The SYNTAX Extended Survival:SYNTAXES)。10年後の全死亡において, PCIとCABGに群間差は示されなかった。しかし, 3枝病変においては, PCIにくらべCABGでより生存ベネフィットが示されたが, 左主幹部病変について差は認められなかった。なお, 糖尿病の有無は死亡率に影響しなかった。 |
MITRA-FR
Multicentre Study of Percutaneous Mitral Valve Repair MitraClip Device in Patinets With Severe Secondary Mitral Regurgitation
概 要 |
重症の二次性僧帽弁閉鎖不全症例において, 薬物療法への経皮的僧帽弁修復術の上乗せは, 薬物療法単独にくらべ, 2年後の全死亡または心不全による予定外の入院を低下させなかった。 |
DANAMI-2
16-year follow-up of the Danish Acute Myocardial Infarction 2 trial-Primary percutaneous coronary intervention versus fibrinolysis in ST-elevation myocardial infarction
概 要 |
STEMI症例において地域病院から血行再建が可能な侵襲治療センターに移送して施行するprimary PCIは, 16年後においてもなお, 地域病院での血栓溶解療法より有効であった。DANAMI-2試験16年後の追跡調査結果。STEMIにおけるPCI施行は, 血栓溶解療法にくらべ, 複合エンドポイント(全死亡, 再梗塞, 後遺障害を伴う脳卒中)の相対的な低下をもたらした。 |
Hot Line Session 5
CLARIFY
Final 5-year results from the CLARIFY study
概 要 |
治療を受けている安定CAD例を登録した大規模レジストリーCLARIFYの5年後の結果。
MI既往の狭心症患者は, 非狭心症患者にくらべ, 複合エンドポイントである心血管死および非致死性MIの5年発生率が有意に高かった。しかし, MI既往のない患者のイベント発生率は低く, 狭心症の有無による違いもなかった。 |
SWEDEHEART
Secondary prevention medication after coronary artery bypass surgery and long-term mortality: A longitudinal population-based study from the SWEDEHEART registry
概 要 |
スウェーデンの循環器救急医療施設に入院した患者全例が登録されているSWEDEHEARTから冠動脈バイパス術(CABG)施行例のデータを抽出し, 心臓手術後の服薬状況(二次予防のためのスタチン, β遮断薬, レニン・アンジオテンシン系阻害薬, 抗血小板薬)の経時的変化と死亡の関連について検討。
術後早期の服薬率は高いものの, 時間の経過とともに服薬率は有意に低下した。この結果に性別による差は認められなかった。 |
ICD use in HF
Association between implantable cardioverter-defibrillator use for primary prevention and mortality: a prospective propensity-score matched study.
概 要 |
HFrEF患者に対する一次予防としての植込み型除細動器(ICD)の利用は, 全死亡の短期リスク(1年)および長期リスク(5年)をともに低下させた。この結果は, 虚血性心疾患, 性別, 年齢等のサブグループ解析においても一貫していた。スウェーデンのSwedeHFレジストリーに登録された患者のデータを用いて, 一次予防としてのICDと全死亡との関連性を大規模HFrEF症例コホートで検討。 |
FRANCE-TAVI
Registry of Aortic Valve Bioprostheses Established by Catheter
概 要 |
TAVI症例の死亡と早期の生体弁機能不全(BVD)との関連を検討している, フランスのレジストリー“FRANCE-TAVI”からの報告。開始後3年の結果として, TAVI後の死亡は, “男性”, “慢性腎不全”, “心房細動”が独立した強力な予測因子になると報告した。また, 退院後の抗凝固療法と非大腿アプローチは, BVD発生率を低下させるが, 慢性腎不全および≦23 mmの弁使用はBVDリスクを増加させるとした。 |
PURE
The Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study;
1. Variations in common diseases, hospital admissions, and deaths in middle-aged adults in 21 countries from five continents(PURE).
2. Modifiable risk factors, cardiovascular disease, and mortality in 155722 individuals from 21 high-income, middle-income, and low-income countries(PURE)
概 要 |
1. 低~高所得国の都市部・農村部の一般住民を対象とした大規模コホート研究からの報告1報目。低所得国5ヵ国, 中所得国12ヵ国, 高所得国4ヵ国の35~70歳の成人男女を中央値で9.5年間追跡。心血管疾患は国際的にも依然として死因の第一位を占めているが, 高所得国および上位中所得国の主要な死因は癌に取って代わられており, 近い将来, 死因の第一位となる可能性が示唆されている。また, 低所得国における高い死亡率はリスク因子によるものではなく, 医療へのアクセスの困難さに起因している可能性がある。 |
2. 心血管疾患の既往のない一般住民において, 修正可能なリスク因子が心血管イベント(心血管死, MI, 脳卒中, 心不全)および死亡に及ぼす影響について検討。心血管疾患および死亡の約70%は, 修正可能なリスク因子と関係していた。代謝因子(高血圧, コレステロール高値, 内臓肥満, 糖尿病)が最も大きな寄与因子で, 中でも高血圧の寄与が高かった。
経済レベルでみると, 高所得国にくらべ, 低・中所得国では大気汚染, 質の悪い食生活, 低い教育程度, 低筋量などが大きく影響していた。 |
Hot Line Session 6
RAPID-TnT
The Rapid Assessment of Possible ACS in the Emergency Department With High-Sensitivity Troponin T
概 要 |
胸痛またはACS疑いで救急搬送され, ベースラインのECGで心筋虚血を確定できなかった≧18歳の症例において, 高感度トロポニンTの1時間プロトコルの実施は, 死亡およびMI予防について, 標準プロトコル(3時間)に劣らない。一次エンドポイントは, 30日後の死亡またはMI。また, 1時間プロトコル群は標準プロトコル群にくらべ, より速やかに帰宅でき, 心機能検査の実施は少なかった。 |
ENTRUST-AF PCI
Edoxaban-based versus vitamin-K-antagonist in Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Percutaneous Coronary Intervention
概 要 |
PCI後の心房細動患者に対するエドキサバン+P2Y12阻害薬の併用は, ISTH基準による大出血/臨床的に重要な非大出血について, ビタミンK拮抗薬をベースにした3剤併用療法に劣らない。しかし, 主要な有効性の一次エンドポイントである心血管死, 脳卒中, 全身塞栓イベント, MI, definiteステント血栓症の発生については, 群間で類似していた。登録患者の年齢中央値70歳。女性は26%。脳卒中既往例13%。追跡期間中央値364日。国際多施設共同ランダム化オープンラベル非劣性試験(Phase IIIb)。 |
POPular Genetics
Cost-effectiveness of Genotype Guided Treatment With Antiplatelet Drugs in STEMI Patients: Optimization of Treatment
概 要 |
primary PCI後のSTEMI症例に対するCYP2C19遺伝子型に基づくP2Y12阻害薬の選択・投与は, 12ヵ月後の総合的な血栓イベント*について, チカグレロルやプラスグレルによる標準治療に劣らず, 出血イベントの発生率も低かった。
*全死亡, MI, definiteステント血栓症, 脳卒中, 大出血/大出血または小出血。
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DAPA
The Defibrillator After Primary Angioplasty
概 要 |
primary PCI後のSTEMI症例でハイリスク因子を有する症例に対する早期の予防的ICD植込みは, 標準薬物療法にくらべ生存率を有意に改善した。
PCIからICD植込みまでの時間の中央値50日。追跡期間中央値9年。 |
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