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薬剤溶出性ステント(DES)とベアメタルステントの比較
DESの安全性を検討したpooled analysis 4報

コメント

今回の4編の論文はすべて,薬剤溶出性ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)を比較したrandomized controlled trials (RCTs)のメタ解析結果である。
最近の報告で,DESがステント血栓症,心筋梗塞,死亡などの重篤な有害事象を増加させるとの安全性懸念が指摘されている。しかしながらStone Gらが述べているように,これらの報告には方法論的な問題があり,真実であると結論することはできない。重要な方法論的な問題としては,検出力不足,観察研究における患者選択バイアスの存在や歴史的コントロール群の使用,不十分な追跡期間,早期のイベント発症例を除外したランドマーク解析,患者レベルのデータにアクセスしないメタ解析,メタ解析における対象試験選択バイアスなどが指摘できる。
ステント血栓症,心筋梗塞,死亡などの稀少イベントを評価するにあたって十分な検出力を有する単一のRCTがない中で,患者レベルのデータに基づくメタ解析はこれらのイベントの評価において最もエビデンスレベルの高いデータとなる。

ステント血栓症の定義の違い,検出力不足のサブグループ解析には注意が必要。
Cypher™とBMSの比較にあたって,Spaulding CStone GMauri Lの3編の論文では,Cypher™の4つの臨床治験(Pivotal trials : RAVEL, SIRIUS, E-SIRIUS, C-SIRIUS)のデータをプールした,ほぼ同じデータソースが用いられている。 ステント血栓症については,Stone Gらはプロトコール定義を用いて,1年以降のステント血栓症がBMS群に比べCypher™群で有意に高かったと結論している。これに対してMauri Lらはステント血栓症イベントをAcademic Research Consortium(ARC)定義で再固定している。プロトコール定義とARC定義の最大の相違点は,標的血管再血行再建(TVR)があった場合に,その時点で観察打ち切りとするかどうかである。プロトコール定義ではTVR以降に発生したステント血栓症はイベントとしてカウントされない。Mauri Lらは,ARC定義(Definite / Probable)を用いた場合には,Cypher™群とBMS群で1年以降のステント血栓症の頻度に統計学的有意差はないとしている。ただTVR後のステント血栓症発症例の多くが冠動脈内放射線治療を受けていることには留意すべきであろう。 Stone G,Spaulding Cともに,死亡や死亡/心筋梗塞の頻度についてはCypher™群とBMS群でまったく差がないとしている。一方,Spaulding Cは糖尿病症例において,BMS群に比べCypher™群で死亡率が有意に高かったとしている。しかしながら糖尿病症例の患者数は428例であり死亡イベントの検出力不足は明らかである。また,Mauri Lらはステント血栓症の致命率を28〜33%と報告しているが,7.8%というCypher™群とBMS群の死亡率の大きな差を遅発性ステント血栓症のわずかな差で説明することは困難である。実際,Kastrati Aらのさらに規模の大きな1411例の糖尿病症例のメタ解析ではCypher™群とBMS群で死亡率に差を認めていない。今回,糖尿病のサブグループにおいてCypher™群の死亡率が有意に高かったという結果は,検出力の不足したサブグループ解析における偶然の結果と考えるべきであろう。 Stone G,Mauri L,Spaulding Cの3編の論文からは,1年以降のステント血栓症の頻度がCypher™群でわずかに高い傾向があるが,臨床的に最も重要な安全性の指標である死亡や死亡/心筋梗塞の頻度にはCypher™群とBMS群で有意の差はないと結論できる。

4編で最もエビデンスレベルが高いのはどの論文か?
臨床治験患者は現在もステントタイプが盲検化されており,モニターも緊密で追跡率も高く,Cypher™とBMSの長期成績を最も科学的に評価することのできる対象である。しかしながら今回の臨床治験のメタ解析の問題点も指摘しておかなければならない。個々の試験は主として有効性を評価する目的で症例数が設定されており,安全性評価の検出力不足のためにメタ解析を行うわけである。しかしながらCypher™群とBMS群あわせて1748例という症例数はステント血栓症,心筋梗塞,死亡などの稀少イベントを評価する上では依然として検出力不足である。さらに対象患者はいわゆるオンラベルと言われる比較的リスクの低い患者背景,病変背景を持つ患者であり,今回の結論が実地臨床で治療されているさらに複雑な患者背景,病変背景を持つ患者に適用可能かという問題もある。 Kastrati A らのメタ解析は,患者単位のデータを主任研究者あるいは企業から取得し,Cypher™ 2486例,BMS 2472例が評価された。対象症例数の増加により検出力の向上は明らかである。対象となった試験のうち,前述のCypher™と BMSを比較する4つの臨床治験以外の試験は急性心筋梗塞などのいわゆるオフラベルといわれる患者を対象に含んだ試験である点は重要である。Kastrati Aらの結論は前述のオンラベル患者のみを対象とした試験の結論と同様で,1年以降のステント血栓症の頻度はCypher™群でわずかに高い傾向があるが,死亡や死亡/心筋梗塞の頻度については,Cypher™の使用で改善は認められないものの,有意の差はないというものである。Kastrati Aらのメタ解析では,オフラベル患者を含んだ試験の追跡期間が短い点が問題であるが,少なくとも2〜3年の追跡ではCypher™の安全性懸念はその有効性を上回るものではないと言える。 もちろん,メタ解析の結果が,その後の十分な検出力を有する単一のRCTによって覆される可能性は否定できない。しかしながら安全性のエンドポイントを評価するにあたって十分な検出力を有する単一のRCTがない中で,現時点でCypher™とBMSの比較において最もエビデンスレベルの高いデータはKastrati Aらのメタ解析である(木村 剛)。

■ 死亡,心筋梗塞,ステント血栓症の発生において,sirolimus溶出ステントとベアメタルステント間に有意差は認められず。詳細
Spaulding C et al: A pooled analysis of data comparing sirolimus-eluting stents with bare-metal stents. N Engl J Med. 2007; 356: 989-97.PubMed

■ 1年後のステント血栓症はベアメタルステント群に比べ薬剤溶出性ステント群の方が発症率が高かったが,同群では標的血管血行再建術の再施行が顕著に抑制された。
4年後の死亡,心筋梗塞においてステント間に有意差は認められなかった。詳細
Stone GW et al: Safety and efficacy of sirolimus- and paclitaxel-eluting coronary stents. N Engl J Med. 2007; 356: 998-1008.PubMed

■ 小さな差の検出力は限られていたが,薬剤溶出性ステント(DES)植込みから4年間のステント血栓症発症において,DESとベアメタルステント間に有意差は認められなかった。詳細
Mauri L et al: Stent thrombosis in randomized clinical trials of drug-eluting stents. N Engl J Med. 2007; 356: 1020-9.PubMed

■ 長期生存率,心筋梗塞非合併生存率において,ベアメタルステント(BMS)と比較したsirolimus溶出性ステント(SES)の有意な有効性は認められなかった。
SESの手技後の血行再建術再施行の抑制効果は持続し,ステント血栓症のリスクはBMSと同様であった。詳細
Kastrati A et al: Analysis of 14 trials comparing sirolimus-eluting stents with bare-metal stents. N Engl J Med. 2007; 356: 1030-9.PubMed


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